こんにちは!今回は気象予報士試験 第63回 実技1 問4を解説します!
(1)解説
◇模範解答

◇解説
図9は5月1日18時の地上実況図です。まずこの図にはすでに1002 hPaの等圧線(実線)が描かれており、×印で示された地上低気圧の中心(日本海北部)を囲むように広がっています。問題(1)ではこれより2hPa低い1000 hPaの等圧線を一ヶ所描き加えることが求められました。1000 hPa線は、低気圧中心のすぐ周囲に存在するはずです。図9の数値(各地点の海面気圧下三桁)を読み取ると、低気圧中心付近の日本海上で989や996といった値があり、陸上では能登半島付近で002、関東北部で012などの値が見られます(例えば「042」は1004.2 hPa、「996」は 999.6 hPa を意味します)。1000.0 hPaに相当する値は「000」ですから、これを挟んで高いほう(4桁で1000以上)と低いほう(999以下)の観測点の間を滑らかに結ぶ線を描けば良いことになります。
具体的には、関東北部(群馬・栃木付近)に012、北陸地方(富山付近)に008・016など1000 hPa超の地点があります。一方、北陸の山沿いや新潟付近には996、東北日本海側には989と1000 hPa未満の地点があります。等圧線は気圧の低い側を右手、高い側を左手に見る向きで回る(北半球低圧)ので、低気圧中心の周りを反時計回りに囲む閉曲線になります。1000 hPaの線はおおよそ、能登半島付近の観測値046(1004.6 hPa)と042(1004.2 hPa)の間を通り、日本海上で低気圧中心の南側を経て、山形沖の989(998.9 hPa)と秋田沖の996(999.6 hPa)の間を抜けて一周する形になります。上図の青実線のように、低気圧中心を取り囲む楕円形に近い線として描くのが正解でした。
作図のコツとして、まず低気圧中心(×印)から2 hPaごとの同心円をイメージし、そのうち1000 hPaがどこを通るかを考えます。既に1002 hPa線が与えられているので、そのすぐ内側(低気圧側)に一回り小さい円を描く感覚です。ただし等圧線は地形や気圧配置によって歪むため、観測値分布に合わせて曲線を滑らかに補間します。観測値「000」(1000.0hPa)が無い場合でも、999と1001の間を通るはずだと推定して描きます。最終的に1000hPa線は一本だけ閉じた曲線になるはずです。これを途切れなく枠の端までしっかり描くことが採点のポイントでした。
(2)解説
◇模範解答

◇解説
次に、地形の影響を受けた地上の温暖前線の位置を推定する作図です。問題文の指示では、「図9の気圧と風の分布を基に、図10の850hPa解析図も参考にして」温暖前線を描くよう求めています。つまり、地上の気圧の谷・風の収束と850hPa面の前線帯を手掛かりに前線を引く問題です。また「記入する範囲は日本海から太平洋にのびる温暖前線の陸上部分のみ」とあります。したがって、低気圧中心から伸びる温暖前線の海上部分は描かず、陸上に上がってから再び海に抜けるまで(日本海側の海岸から太平洋側の海岸まで)を破線で示す形になります。
まず、図10(850hPa気温・風解析図)を見てみます。5月1日18時の850hPa面では、本州付近に南北の大きな温度差が存在しています。等温線を見ると、9℃前後の等温線が本州中部を東西に走り、その北側に6℃以下の寒気、南側に15℃前後の暖気が位置しています。特に東北地方南部上空で南北の温度傾度が大きく、上昇流域が伴っていることが示唆されます。これが850hPa面の温暖前線に対応します。850hPaの温暖前線は、閉塞点(寒冷前線と温暖前線が交わる点)から関東北部にかけてほぼ東西に延びているとの予想結果が示唆されています。
次に、地上(図9)の気圧・風に注目します。温暖前線は低気圧の暖域と寒域の境界に位置し、地上では気圧の谷線に相当します。また風向は前線を挟んで南寄り(暖気側)と東~北寄り(寒気側)で大きく変化します。図9では、北陸地方から関東北部にかけて風向が南東や東寄りから南西寄りに変わる地点が存在します(例えば新潟付近は東風、長野付近は南風)。また関東北部では弱い気圧の谷が存在し、風の収束も示唆されます。これらを踏まえ、850hPa面の温暖前線が地上よりもやや北に位置していることを考慮します。一般に前線面は上空ほど極値の位置が北側(寒気側)にシフトする傾向があり、特に地形の影響で地上では前線が南に押されることがあります。
北日本の地形(奥羽山脈など)の南側では、暖かい空気が山に当たって滞留し、地上では前線が南下しやすくなります。今回も地形により850hPaの温暖前線位置より地上前線が南側にシフトしていると考えられます。具体的には、図10で解析した850hPa温暖前線が東北南部にあったものが、地上では関東北部まで南下している可能性があります。
以上の推論から、解答例では地上温暖前線は、日本海上の閉塞点付近(低気圧の東側)から秋田県沖に上陸し、南東方向に湾曲しながら福島県・茨城県方面へ伸び、房総半島沖に抜ける形で描かれています(解答参照)。この線は、図9の圧力場では1002 hPa等圧線の谷に沿う位置です。山形盆地付近から会津・関東北部にかけて少し南に曲がっており、これは奥羽山脈による遅れで前線が南側に膨らんだ(南に凸)形状になっています。また関東平野では南東風と南西風のぶつかる境目あたりを通っています。
作図時の注意として、前線の端点を明確にすることが挙げられます。日本海から上陸する点と太平洋に抜ける点で、前線は枠外(海上)へ続くので枠線ぎりぎりまで延ばす必要があります。また破線の引き方(長さや間隔)は、温暖前線であることがわかるように図例に倣うこと。過去問でも温暖前線の陸上解析は頻出で、基本は「850hPaの等温線集中帯=地上前線の候補」を地形効果で補正することです。
以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!
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